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「よし、食べるか」  講義が終わって食堂へ移動した真琴達は、それぞれ注文した物をお盆に乗せて、空いている席についた。  前の時間が必修の講義だった事もあって、今日は染谷以外に勇仁と仲の良い二人が加わって、五人で食べる事になった。 「いただきます」  真琴が本日注文したのは天丼で、箸を手にすると早速、好物である海老の天ぷらに齧りついた。学食の天丼は他のメニューに比べてボリュームがあるので、食べ終わると満腹で動くのが苦しくなる程だ。  以前にも何度か頼んだ事があり、毎回お腹がパンパンになる。量が分からずに初めて注文した時が一番最悪で、お腹一杯になった状態で直ぐに講義があった。  満腹状態でひたすら教授が説明する面白くない講義は、眠気との戦いしかなく、あの日は地獄をみてしまった。  そんな経験から、天丼を頼む時は直ぐに講義がない日を選ぶようになった。  満腹になるのが分かっていても、学食の天丼は海老が比較的大きい事と、掛かっている甘めのタレが真琴好みなので、ふと食べたくなる時がある。そんな時は、今日は天丼を食べると決意して頼むのだ。 「そういえば……二人の共同生活は、上手くいってんの?」  ご飯をかき込んだタイミングで、染谷から急に聞かれて、真琴は思わず噎せてしまった。 「春木、大丈夫か?」 「だ、大丈夫」 「そめやん、聞くだけ野暮ってやつだ。俺達は何の問題もなくやっていけてるぜ」  落ち着かせる為に手元にあった水を飲んでいると、喋れない真琴の代わりに勇仁が答えた。
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