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「勇仁なら、泊めてくれる女の子、いっぱいいるだろ? そっちに世話になれば良かったんじゃねぇの?」  染谷と勇仁のやりとりを聞いていた内の一人が、おもむろに言ってきた。  真琴も自宅に泊める前にそれは思った事があったので、勇仁が何て答えるのか気になって耳を傾けていた。 「いや、それはないな。女の子の家に世話になるのは、色々と面倒だから」  少し考えてから答えるかと思っていたが、勇仁は考える間も無くサラッとそれだけを言う。 「流石は、遊び人の勇仁サマ! 色々と面倒だなんて、言う事が違うなぁ」  ここに居る皆も勇仁の女性関係が派手なのは知っている為、その返事に納得したようだ。多少茶化した様に言っていたが、それ以上は掘り下げて聞くつもりはないらしい。 「そうか? それに、まこが泊めてくれるって言ってんのに、他に行くわけねぇだろ」 「はぁ!?」  続けて言った勇仁の言葉に、真琴は驚きのあまりに思わず声を出してしまった。  先ほどと同じくあまりにサラッと言ったので、思わず聞き流しそうだったが、自分の名前が出たので流せなかった。  家の中では相変わらず、勇仁の思わせぶりな発言はあった。でも、それが外でも言われると、真琴はどうしていいのか分からなくなる。 「勇仁、言い方に気をつけないと、お前狙いの女の子に誤解されるぞ。それと……春木がどうリアクションしていいのか困ってるし」  徐々に収拾がつかなくなりそうだった所を、染谷がフォローしてくれた。やはり、こういう時は的確に口を挟んでくるので、頼りになる。
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