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「えー? まこは、素直に喜んでおけばいいんだって」
「な、何言い出すんだよ。バカじゃないのか」
相変わらず自然体で接して来る勇仁に、真琴は動揺のあまりに冷たい口調になってしまった。
「はぁ……まこが今日もツレない……。でも俺達、上手く生活出来てるよな?」
「……ああ、そうだな」
一瞬だけ勇仁が落ち込んだ素振りを見せたが、心配する間も無く直ぐに隣に座る真琴との距離を縮めて、確認してきた。
急に縮まった距離に慌てた真琴は、顔を逸らしながら短く答える。
「お前等、仲良しだな」
その様子を見て、少し呆れながら染谷が言うと、他の二人も続いて頷いた。
勇仁が真琴の家に泊まりに来て、今日で三日目となる。初日こそ色々とあったものの、不思議なもので二日目の夕方あたりからは、勇仁が居る生活に徐々に慣れつつあった。
それでも、朝に目覚めて起き上がる時に、勇仁の寝顔を見て複雑な気分にはなる。
ベッドで一緒に寝ていないとはいえ、どうしても勇仁の寝顔を見ると、ホテルで見た時の光景と重ねてしまうのだ。
それだけを除けば、勇仁との生活は思っていたより普通に過ごせていた。
昼食を食べ終えると、午後一にある講義の時間が迫ってきた。真琴と勇仁以外は取っている講義があった為、直ぐに教室へと向かって行ってしまった。
「まこ、今日は何時で帰る?」
「今日は、四限目を受けたら終わりだけど」
二人して食堂の椅子に座ったままでいると、勇仁が午後からの予定を聞いてきた。
「そっか。俺の方はこの後は、ゼミの先輩に呼び出されてるだけだから……真琴が終わるのを待つとするかな」
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