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今だってその所為で勇仁の顔をまともに見て話す事が出来ないのだ。
しかし、極端に顔を逸らせば勇仁から突っ込んで聞かれるのが分かるので、微妙に顔を逸らして会話を続けた。
「まだ起きるには時間が早くないか?」
「え、うん……」
「もしかして、俺が物音立てたから起こしちまったかな。時間には余裕あるだろうし、もう一回寝ておけよ」
「……うん、そうする。勇仁は?」
勇仁の言葉に甘えて、真琴は再びベッドの上に横になった。まともに勇仁の顔が見れない今は、布団を被れる方が都合が良かった。
「今日は昼からバイトが入ってる。俺も寝たい所だけど……今寝たら、そのまま寝過ごしそうだからな。俺は用意しながら起きてるよ」
「そっか。あ……勇仁」
勇仁の予定を聞いた瞬間、真琴も講義を受けた後に、自分もバイトが入っていた事を思い出した。
「ん? まこ、どうした?」
「オレも今日は大学に行った後、バイトがあるんだ。だから、帰りが遅くなるんだけど……」
部屋の鍵を渡していない為、もし真琴より先に勇仁が帰ってきたら、家に入れなくなる。
真琴より遅く帰ってくるならいいが、昼から入ると言っていたから、早めに終わる可能性が高そうだ。
「そっか。俺の方は夜の八時ぐらいになりそうだけど、まこは何時になる?」
「オレは、九時ぐらいかな」
返ってきた時間を聞いて、思っていたよりも帰宅時間の開きは大きくない事にホッとする。
「一時間か。ちょっと時間あるな」
「そうだな。じゃあ、鍵を……」
一時間のズレは意外に長いし、時間帯的に時間を潰せる所も限られてしまう。それなら、勇仁にスペアキーを渡しておいた方が良さそうだと思った。
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