【4】

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 特定の誰かと一緒に飲む訳ではなさそうだが、今度は時間潰しに付き合ってくれる人がいるというのが分かって、真琴はさっさと話しを終えた。  それは、決して安心したからではなかった。何故だか真琴は、これ以上勇仁から話を聞いて、自分の知らない人物の事を思い浮かべるのが嫌になったのだ。 「おやすみ……」 「ああ、おやすみ」  話を終わらせた後、真琴が言った挨拶に勇仁が答えて、それ以降は急に静かになった。  勇仁は真琴が寝るから邪魔をしてはいけないと思って、何も喋ってこないのだろう。  時々、勇仁がたてる物音が聞こえてくるが、控え目に気をつけているのが分かって、目を瞑ったままでやり過ごした。  最初は無理に目を閉じただけだったのに、次第に眠気が襲って来てうとうとし始めた。  後もう少しで意識が離れていきそうだったタイミングで、玄関のドアが開き、直ぐに閉じる音が真琴の耳に入ってきた。  多分、通常出かける時間より早めに準備して家を出たのだろう。  寝かけようとしていたが本当は起きていただけに、勇仁の気遣いに申し訳なく思った。  どれぐらい早めに出たのか時間を確認しようかとも思ったが、目を開けるのが億劫で結局確認しないままにした。  真琴が自分で設定した携帯のアラームが鳴らない所からすると、昼前だという事だけは分かった。  二度寝する時間は残っていそうだった為、寝がえりを打って再び眠ろうと試みる。眠気は未だにあるものの、不思議と意識はハッキリとしてしまった。 「落ち着かない……」  はぁ……とため息を軽く吐いて、真琴は呟いた。
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