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「え? 特にないですけど」  急に砂川からバイト後の予定の有無を聞かれ、驚きながらも素直に返す。  何か頼み事でもあるのだろうか。面倒な事なら、出来れば避けたい。  砂川の性格を考えれば、面倒な事を人に頼むタイプではないので、それはなさそうだと直ぐに思いなおした。 「じゃあ、バイト終わったら私とご飯に行かない? 前に話した時、行こうって言ってたし」  真琴の予想通り、砂川は何かを頼むつもりではなく、単純にご飯の誘いだった。確かに、前に休憩室で顔を合わせた時に、そんなやりとりをした事を思い出した。 「……ええ、いいですよ」  砂川に返事をした瞬間、真琴の頭に勇仁の顔が過った。  家から出る前に、バイト終わりの時間を勇仁に教えていた。砂川とご飯に行く事になったので、予定よりも帰りが遅くなると勇仁に連絡を入れておかなければならない。  そう思って携帯を取り出そうとしたが、勇仁の帰り時間が割と遅かったのを思い出した。  仮にバイト後に砂川とご飯へ行ったとしても、勇仁より先に帰れ来られる筈だ。それならば、わざわざ連絡を入れなくても大丈夫そうだと思った。 「じゃ、バイト終わりに宜しくね」 「はい」  備品を手にした真琴は、砂川と二人してスタッフルームから出て行った。  調理場へ戻ると、客が徐々に増えてきている所だった。  これから忙しくなりそうだと思った真琴の予感は、見事に的中した。上がってきた注文を片っ端から作っていると、あっという間に過ぎて、バイトの終了時間を迎えていた。
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