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  「いやー、今日は働いたわ」 「お疲れ様でした。休日はやっぱり、平日よりお客さんが多いですね」  バイトを終えた真琴と砂川は、店の近くにある中華屋に来ていた。  急にご飯へ行く事になった為、店の候補がなくて二人して悩んだ。暫く考えていると、以前バイト仲間が美味しいと話してくれた中華屋の事を思い出して提案した。砂川も二つ返事で賛成してくれたので、早速足を運んで来てみた。  店に入ると、片言の挨拶をした大柄の男と、その奥から顔を出した女性の二人に出迎えられた。話す言葉と顔つきからして、中国人の夫婦で店を切り盛りしている様だ。  夕飯にしては少し早い時間に入った為、店内は空いていて奥のテーブル席へと案内された。数多く書かれてるメニューを見ながら、真琴は酢豚の定食に決めて、砂川は蒸し鳥の刀削麺を選んで注文した。  注文後もどんなメニューがあるのか見ていたら、捲った前菜のページで干し豆腐の和え物を見つけた。確かこの店を教えてくれたバイト仲間が、美味しいとお勧めしていたメニューだったのを思い出し、追加で頼んでみた。  今度バイトで会った時に、話のネタにしてやろうという思いもあった。 「今日は忙しかったけど、春木君とシフトが一緒で助かったわ」 「そうですか? 有難うございます」  出された水を飲みながら言った砂川の言葉を聞き、真琴は言われた事に喜んだ。 「春木君はこっちが言う前に動いてくれるから、一緒に入っててやりやすいわ」 「砂川さんにそう言ってもらえて嬉しいです。何せ、オレの元教育担当ですからね」 「あー、そうだったね。随分前に感じるけど、一年前ぐらいだよね?」 「はい」
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