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バイトの懐かし話で花を咲かせていると、直ぐに前菜が運ばれてきた。あくまでメインはこれからなので、軽くつまむつもりで砂川の分と共に小皿に取り分けた。どんな味か想像出来ないまま口に運んだら、その瞬間から思った以上の美味しさに箸が止まらなくなってしまった。
砂川と二人で「美味しい」と連呼しながら食べていると、メインで頼んだ定食と刀削麺が運ばれて来て、会話は一旦中断してしまった。
美味しいご飯を堪能して、ひとしきり喋ったらいい時間になった。入った時は空いてた店内も混み始めてきた為、そこでお開きとする事になった。
駅まで砂川を送り届けて、そこで別れた。
最近は勇仁と一緒に居る事が多いので、こうして別の人とゆっくり喋りながらご飯をする事が新鮮だった。
知らぬ間に鬱々としていたらしい気持ちが晴れて、真琴は自宅まで軽快な足取りで帰っていった。
駅から十分ほど歩いた所にある真琴のアパートに辿り着くと、ドアの前に人影が見えた。
「勇仁……」
驚きながら、真琴はその人物の名前を呼ぶ。
家の前で真琴の帰りを待ってる人物なんて一人しかいないのだが、この時間に居る事が予想外で驚かされた。
「まこ、遅かったな」
確か……家を出る時に勇仁は、夜の九時に帰ると言ってた筈だ。その時間よりも今は一時間近く早い。だから既に家に帰ってるとは思わなかったので、驚くのも仕方がない事だ。
「勇仁こそ……早かったんだな」
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