【5】

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 別にやましい事はしていないのだが、こういう形で会ってしまうと何となく気まずい。今になって真琴は、予定より遅くなると勇仁に連絡を入れなかった事を悔んだ。 「こっちは、予定が早めに終わってな」 「そう……待たせてごめん」 「別に、そんなに待ってないし」  会話は普通だが、どことなく勇仁が怒っている様に感じて、真琴は震える手で鍵を差し込みドアを開けた。  勇仁がどれぐらいの時間、ここで待ってたのかは分からない。夜といえど、蒸し暑い中で待たせた事に、申し訳ない気持ちになった。 「家の中、ムッとするな。エアコンつけるから、ちょっと待っ……」  沈黙に耐えられず、玄関で靴を脱ぎながらベラベラと一人で話していると、いきなり勇仁に腕を掴まれた。  どうしたのかと真琴が聞く隙を与えず、勇仁は掴んだ手に力を込めると、今度は引っ張って部屋の中まで連れて行った。 「ゆ、勇仁っ……一体、どう……」  手が離された時には、真琴はいつも寝ているベッドの上に倒れ込んでいた。  勇仁を怒らせている事は理解したが、原因が分からないままで、混乱する。  起き上がらずに倒れこんだままの状態でいると、勇仁はリモコンを手に取って、エアコンをつけていた。ピッと鳴った音がした後、リコモンを再び机の上に置いた。 「まこ……俺、何度か聞いたよな? まこに彼女がいるんじゃないかって……」 「え? ああ……」  やっと勇仁が喋り出したかと思えば、今度はベッドに寝たままでいる真琴の上に乗りかかってきた。  今のこの状況も、勇仁が言ってくる内容も、真琴にとっては疑問に思う事ばかりで、何て返せばいいのかと頭を悩ませる。
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