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別にやましい事はしていないのだが、こういう形で会ってしまうと何となく気まずい。今になって真琴は、予定より遅くなると勇仁に連絡を入れなかった事を悔んだ。
「こっちは、予定が早めに終わってな」
「そう……待たせてごめん」
「別に、そんなに待ってないし」
会話は普通だが、どことなく勇仁が怒っている様に感じて、真琴は震える手で鍵を差し込みドアを開けた。
勇仁がどれぐらいの時間、ここで待ってたのかは分からない。夜といえど、蒸し暑い中で待たせた事に、申し訳ない気持ちになった。
「家の中、ムッとするな。エアコンつけるから、ちょっと待っ……」
沈黙に耐えられず、玄関で靴を脱ぎながらベラベラと一人で話していると、いきなり勇仁に腕を掴まれた。
どうしたのかと真琴が聞く隙を与えず、勇仁は掴んだ手に力を込めると、今度は引っ張って部屋の中まで連れて行った。
「ゆ、勇仁っ……一体、どう……」
手が離された時には、真琴はいつも寝ているベッドの上に倒れ込んでいた。
勇仁を怒らせている事は理解したが、原因が分からないままで、混乱する。
起き上がらずに倒れこんだままの状態でいると、勇仁はリモコンを手に取って、エアコンをつけていた。ピッと鳴った音がした後、リコモンを再び机の上に置いた。
「まこ……俺、何度か聞いたよな? まこに彼女がいるんじゃないかって……」
「え? ああ……」
やっと勇仁が喋り出したかと思えば、今度はベッドに寝たままでいる真琴の上に乗りかかってきた。
今のこの状況も、勇仁が言ってくる内容も、真琴にとっては疑問に思う事ばかりで、何て返せばいいのかと頭を悩ませる。
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