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「俺、見たんだ。まこが彼女と中華屋から出てきた所。さっきまで、彼女とご飯行ってたから遅くなったんだろ?」
砂川とご飯へ行ってた所を見られたらしい。言われてやっと、勇仁が怒っている原因が少し分かった気がした。
「あ……あれは」
「別に、隠さなくていいだろ?」
「いや、隠してる訳じゃなくて……」
真琴を見下ろす勇仁の目が鋭くなったのを見て、少し口籠る。誤解されてるだけなのだが、事実を話せる空気でもなさそうだ。
「連絡しなかったのは、俺が帰ってくるまでに戻ればいいやって思ったんじゃないのか? 何に遠慮してる分からねぇけど、こそこそされるのはいい気がしないな」
「違っ……そういうんじゃなくて、彼女は同じバイト仲間でっ……」
あの時、ちゃんと連絡を入れておけばよかったと、またしても後悔した。
せめて砂川との誤解だけでも解かねばと思い、真琴は必死になって否定する。
しかし、言い終わる前にいきなり首元にチクリとする痛みに似たものを感じて、喋るのを中断させてしまった。
「あの時見たのはやっぱ、俺の思い違いじゃなかったな」
勇仁の声がさっきよりも近くで聞こえて、まさか……と嫌な予感が頭を過る。
「ゆ、勇仁……?」
不安な心につられるように、声も少し裏返ってしまった。首元には、痛みの他にも生暖かいものが触れた感触があった。
何かの間違いだと思いたいが、真琴の目に勇仁の頭が映っている事から、首元を吸いつかれたんだと分かった。
「まこが、AV見ても勃たなかったから、油断してたんだけどな……」
小さな声で呟いていたが、この距離ではハッキリと聞こえてしまい、顔が熱くなった。
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