【5】

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 前にも思って注意しようとしていた事だったのに、今ので出来てなかった事を思い知らされた。  勇仁と真琴は一緒に居過ぎて、二人の距離感が狂ってしまっているのだ。でないと、恋人がいるのを黙ってたと誤解して怒ったとはいえ、あんな行為に及ばない筈だ。 「はぁ……」  さっきの事を思い出し、少しだけ体温が上昇した様な気がした。真琴の中でそれを素直に認めたくなくて、首を横に振って気を紛らわせた。  家に帰ってから色々と起きてしまったが、結果として予定よりも早く勇仁との共同生活が終わって、良かったんだと思った。  じわじわとこみ上げてくる気持ちを消化しきれず、真琴は胸元をギュッと掴んだ。  勇仁と再び一緒に生活する事はもうないとして、この機会にしっかりと気持ちの整理をしておこう。友人としての距離感をちゃんと立て直さないと……。  自分でも理解出来ない気持ちに揺さぶられてしまい、真琴の焦る気持ちはより強くなった。 *** 「春木、お疲れー」 「あ……染谷。お疲れ」  夏休みに入る前のテスト期間がやってきて、今日もその内の一つを受け終えた所だった。  講義室から出た所で背後から声をかけられ、振り返ると染谷が居た。  テストを終えたばかりの講義は勇仁と三人で受けていたので、染谷がここに居てもおかしくはない。ただ、染谷の隣に勇仁が居ないのを除いては。 「テスト、どうだった?」 「うーん、単位は貰えそうかな。所で、勇仁は一緒じゃなかった?」
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