【5】

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 肩を並べて歩きながら、そういえば染谷と二人だけで会話をするのは初めてだと思った。いつもは必ず二人の間に勇仁が居たから、今は居ない存在が気になって聞いてしまった。 「勇仁なら、さっさと帰ったぜ」 「……そう」  染谷が知ってるか確信は無かったが、返ってきた返事に気持ちが沈んだ。  たまたま講義室で姿を見かけただけなのかもしれないが、真琴には勇仁から何の連絡もないのに……と、少しだけ悲しくなった。  真琴の家を勇仁が出た日から、もう少しで一週間が過ぎようとしていた。その間、勇仁から連絡が来る事はほとんどなかった。  真琴も急な変化に気にはなっているが、今まで勇仁からの連絡を受けるばかりだったので、自分からは何となく送りづらい。日が経ってしまうと、余計に何て送ればいいのか分からなくなって、結局そのままにしていた。  一緒に住む前も必要以上に勇仁から連絡が来る事は無かったが、それでも同じ講義を受ける前等は連絡がきていた。 「元気か?」  知らぬ間に俯いてしまってた様で、掛けられた声にはっとして顔を上げた。若干、心配そうにしている染谷が視界に入って、ひらひらと手を振っているのも見えた。 「元気……かな?」 「自分の事なのに疑問形で言うあたり、元気じゃないだろ」  相変わらず染谷は人の事をよく見ていて、鋭い指摘をしてきた。 「まぁ……原因は勇仁なんだろ?」 「……うん」  染谷の口から勇仁の名前が出て、思わずドキリとした。  一体何処まで気付いてるのかは分からないが、下手に嘘をついてやり過ごせる相手ではない事がわかって、真琴は素直に頷いた。
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