シアエガの家

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家に帰るまでそのままの姿で居るようにとばあちゃんに言われ、友人はその通りにした。 ところが、その日の夕方、その友人の母親がうちに怒鳴り込んできた。 「うちの息子に何をしたんですか!うちの息子まで、あなたがたの宗教もどきに巻き込まないでくれます?」 そう癇癪を起こした。 「あの女には悪霊がついている」 ばあちゃんは、そう言ったが、さすがに俺も怒るのは当たり前で、悪霊などついてはいないと思った。 ばあちゃんは何でも悪い事は悪霊のせいにするのだ。 ばあちゃんは悪霊の影が見えると言ってはばからなかった。 あくる日、こっくりさんは、実は俺が10円玉を動かしてたんだと、もう一人の友人が笑いながら言った。 「お前のばあちゃん、ここがおかしいのか?」 その日から、俺に対するイジメがはじまった。 頭がおかしい婆さんの孫。理由はそんなところだ。 くだらないゲームのようなものだ。俺は、自然と学校には行かなくなり、引きこもった。 兄達は、高校を卒業するとすぐに家を出た。お祓いと称して、塩や聖水をしょっちゅうかけられたからだ。 ばあちゃんの奇行に堪えられなかったのだ。 ばあちゃんは、兄達が悪霊にさらわれたと思っている。 家族はヘトヘトに疲弊していた。ばあちゃんはボケているようではなかった。 ただ、あの宗教がばあちゃんを変えてしまった。 そして、ついに我が家にとって最悪の事件が起きた。 ばあちゃんは、邪神シアエガが眠りから覚めて、母を襲っていると言って、母の顔に熱湯をかけたのだ。 「沸騰した聖水でなければ、シアエガには効果がないのよ!」 父に取り押さえられた、ばあちゃんの目はもう人ではなかった。 俺は許せなかった。 母をあんな酷い目に合わせたばあちゃんが。
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