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ばあちゃんの布団の周りに、父と母と俺が立ちすくんでいる。
「どうしよう。」
母は目から涙を流し続けている。
俺は少年院送りか・・・。うなだれていると、父が信じられない言葉を口にする。
「隠そう。」
俺と母は父の顔を見た。
「うちの会社に粉砕機がある。」
母は、信じられない面持ちで口を覆う。手が震えている。
「そんな・・・あなた!」
「じゃあ、お前は、裕也を犯罪者にしたいのか?」
「・・・」
「母さんにはうんざりしていたんだ。母さんのおかげでうちはめちゃくちゃになった。
俺が前の会社をクビになったのだって、社長婦人に悪霊が憑いていると言って、あの団体に勧誘しようとしたからだ。
あんな宗教に入らなければ。母さんのいつも飲んでいた宗教団体から渡された薬草ってのが、幻覚作用があるともっぱらの噂だ。母さんはあの得体の知れない新興宗教団体に、幻覚を見る薬草を渡されて騙されてたのさ。」
その時、急に電気がバチンと落ちた。
「・・・停電?」と母。
「いや、よそのお宅は電気がついている。ブレーカーが落ちたんだろう。見てくる。」
父はそう言うと懐中電灯を片手に、ブレーカーのある玄関に向かった。
ニチャリ・・・。
暗闇から音がする。
「何?」と母。
ニチャリ グチャ・・・グチャグチャ
何の音だろう。
ズルッ、ズルッ。
いずれにしても粘着質な音が暗闇に響く。
その時、ぱっと電気がついた。
「やっぱりブレーカーだった。」
父が帰ってきて、ふと足元を見ると違和感を感じた。
祖母が横たわっているはずの布団が妙に平べったいのだ。
俺は、勇気を出して、布団をめくりあげた。
「あれ?ばあちゃんの死体が無い。」
そこには、血溜まりがあるのみで、死体はきれいに消えてしまっていたのだ。
確かに全員で、ばあちゃんの死体を確認したはずだ。
忽然と、ばあちゃんの死体が消えたのだ。
「嘘でしょう?おかあさんの死体、どこにいっちゃったの?」
ニチャリ。
またあの音だ。
俺達は音のするほうに顔を向けた。
押入れがうっすらと開いている。
押入れはしまっていたはずだ。
ニチャリ、グチャリ。
何かを咀嚼するような音。
目を凝らすと、そこからばあちゃんのものと思われる足が飛び出していた。
俺は鳥肌がたった。
なんで?
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