白い手

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 驚嘆の声に、つられて仕切りの向こうを覗く。そこには思ってもいなかった光景が広がっていた。  仕切りに覆われた隣のベッド。その一帯が凍りついていたのだ。  ベッドも、床も、天井までもが凍りついている。もちろん仕切りも凍っているのだが、不思議なことに、それは空間内に向いた内側だけで、外は凍るどころか、触っても冷たささえ感じないのだ。 「どうなってるの…?」  保健の先生が茫然とつぶやく。それを耳の奥で聞きながら、俺はあの手のことを思い出していた。  俺に向けて差し出されていた手。この、凍りついた空間のように真っ白だった手。もしあれに触っていたら、俺はいったいどうなっていたのだろう。  あの時一際頭痛が酷くなったけれど、おかげであの人の手を握らずにすんだからよかった。でも、頭痛さえなければ保健室へ来ることもなかったと思うと、喜んでばかりもいられないけれど。  多分女の子だとは思うけれど、実際には顔も知らぬ相手が差し出していた真っ白な手。それが触れていた辺りの仕切りが、ぱりんと、氷の軋む音を上げた。 白い手…完
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