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腹黒な私の旦那様!
「ど、どういうことなの…」
私は、目の前でにっこり微笑む男を見て、呆然と呟いた。
どうして、どうしてこうなってしまったんだろう!
「何を驚いているのです?」
「何をって…分からないんですか!?」
「はははっ、分かりませんね」
彼は猫のように目を細め、悪戯に笑いかけてくる。
と、とぼけるなんて卑怯だ!
「これですよ、これ!」
私が机の上に置いてある一枚の紙を指差すと、彼はきょとんと首を傾げた。
「……ちょっと。なんで、きょとんとしてるんですか」
「いやぁ、その紙がどうかしました?」
「どうかしたか、じゃないですよ!」
勢いよく紙を手に取って、彼の眼前に突きつける。
だって、正気じゃない。
「こ、これ……婚姻届じゃないですかっ!」
「ええ、そうですが?」
「そうですが?って…!」
当たり前のように認める彼に、唖然としてしまう。
彼は、私が持っている婚姻届をするりと抜き取ると、満面の笑みを浮かべた。
「君は、僕の奥さんになる。そうでしょう?」
ああ、わけが分からない。
「最悪だ…この世の終わりだぁ…」
うぅ、と唸りながら、思わず頭を抱える。
どうしてこうなってしまったんだっけ?
確か、彼と出会ったのは、ついさっき…二時間前のことだ。
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