腹黒な私の旦那様!

1/22
前へ
/22ページ
次へ

腹黒な私の旦那様!

「ど、どういうことなの…」 私は、目の前でにっこり微笑む男を見て、呆然と呟いた。 どうして、どうしてこうなってしまったんだろう! 「何を驚いているのです?」 「何をって…分からないんですか!?」 「はははっ、分かりませんね」 彼は猫のように目を細め、悪戯に笑いかけてくる。 と、とぼけるなんて卑怯だ! 「これですよ、これ!」 私が机の上に置いてある一枚の紙を指差すと、彼はきょとんと首を傾げた。 「……ちょっと。なんで、きょとんとしてるんですか」 「いやぁ、その紙がどうかしました?」 「どうかしたか、じゃないですよ!」 勢いよく紙を手に取って、彼の眼前に突きつける。 だって、正気じゃない。 「こ、これ……婚姻届じゃないですかっ!」 「ええ、そうですが?」 「そうですが?って…!」 当たり前のように認める彼に、唖然としてしまう。 彼は、私が持っている婚姻届をするりと抜き取ると、満面の笑みを浮かべた。 「君は、僕の奥さんになる。そうでしょう?」 ああ、わけが分からない。 「最悪だ…この世の終わりだぁ…」 うぅ、と唸りながら、思わず頭を抱える。 どうしてこうなってしまったんだっけ? 確か、彼と出会ったのは、ついさっき…二時間前のことだ。
/22ページ

最初のコメントを投稿しよう!

28人が本棚に入れています
本棚に追加