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「最悪だ…この世の終わりだ…」
僕はつい呟いてしまった。それほどまで切羽詰まっていた。
「ん?何か言ったか?」
おっとと。お嬢様に聞こえてしまったようだ。今は登校中。お嬢様以外にもまわりには登校中のご学友の皆様がいる。気を引き締めないと。
「はい。今日は一段と冷えますねと。最近まではどちらかと言うとまだ暖かい日が多かったんですが」
無難な天気の話。話題振りの定番。まず間違えることはない。
「何を言ってるんだ。最近はずっと寒い。冬はこれだから嫌いなんだ。出来ることなら一日中部屋の中に居たい」
……どうやら最初の言葉はごまかせたみたい。良かった。
でもその次が良くなかった。
「駄目ですよお嬢様。学生は学校で勉強することがお仕事です。ご頭首様も心配してしまいます」
「……。ご頭首様……ねぇ」
やってしまった。お嬢様の前でご頭首様の話をしてしまった。理由は分からないが、お嬢様はご頭首様の話をすると、とたんに機嫌を悪くしてしまう。ご頭首様=お父上様と何かあったんだろうか?
と、思案しながらオロオロしていると。
「冗談だ。学校にはちゃんと行くさ。……約束もあるしな」
約束?約束とはなんだろう?と胸を撫で下ろしながら聞き返そうと思ったが、その前にお嬢様は顔を破顔させながら新たな話題を切り出してしまった。
「ところで、今朝の話は覚えているだろうな?」
「……。え?」
頭が真っ白になった。
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