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今日が終わってほしくなかった。 それでも時間が止まるはずはなく、日はだんだんと落ちてきた。 まだ肌寒い春の風が吹き、かよに終わりの合図が出る。 「寒くなって来たね。帰ろうか」 「あ…はい」 少しそばまで歩き、彼は指をさす。 「俺こっちなんだ」 あたしが帰る道とは反対の方向。 「またね」 彼はあたしに またね と言った。 単純にここに来ればまた会えると思ってなんだか心がスッとした。 「はいっまた!」 帰り際にも彼は笑ってくれた。 それから毎日公園に足を運ぶが、あの彼に会うことはなかった。 「あー…浅海(あさみ)部長、テンション上がらなくて写真がうまく撮れません」 「かよちゃーん、それ木だよ。部長はこっちだよ」 「あれはもう重症です。ほっとけば治るんで、気にしないで撮りましょう」 「美那子ひどーい…」 あのキラキラの彼に会えないで一週間。 部活で公園に行くこともあったのになかなか会えない。 部活がオフになった日も急いで公園に向かうけれど、そこに彼はいなかった。 「かよさ、学校の中で探したことある?公園学校の隣だし、もしかしたら同じ学校かもよ」 「それだあああああっ!!部長、お腹痛いんで保健室行ってきます!」 そう言うと部長の断りもなく猛スピードで校舎に向かった。 「…お腹痛そうには見えないよね」 「遅かったらあたしが連れ戻すんで、大目に見てあげてください」 足を止めることなく走り続けた。
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