II

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いったい…… どれだけの時間が経ったんだろう。 真斗は、カーテンの隙間から射す日の光を ぼんやりと見つめた。 俺があいつの家族を殺したすぐ後に あいつは、 酔って帰ってきた。 俺は包丁を握りしめ玄関に 立ち塞がった。 あいつは玄関に尻餅をついて 俺の振り上げた包丁を見て 泣きながら命乞いした。 「すまなかった…… 頼む! 殺さないでくれ!」 サイレンの音が鳴り響き やって来た警官に 俺は取り押さえられた。 どうなってもいいって そう思ってた。 あいつと、あいつの家族を殺せるなら それでいいって そう思ってたんだ。 俺が人を殺したら 家族がどんなに苦しむか…… そんな事すら考えられなかった。 …………狂ってた 畜生! あの時警官が来る前にあいつを殺してたら こんな事にはならなかったんだ。 俺の家族は死ななかった。 あいつは今も幸せにどこかで のうのうと暮らしてる。 ……幸せか……? いや…… 幸せなんかじゃないよな。 俺は あいつの大切な家族を殺したんだ。 地獄を見たのは、俺じゃない。 のうのうと暮らしてたのは俺の方だ。 家族がどんなに悲しんでたのかも さっぱり気づかないで 俺は呑気に刑務所で暮らしてたんだ。 俺には 俺を待ってると言ってくれた加奈がいてくれた。 甘えてたんだ。 待ってると言ってくれた加奈の言葉に…… どんなに加奈が苦しんだのか 考えもせずに、 出所したらもう一度あいつを 殺そうって 俺はそれしか考えてなかった。 もう、十分だったんだ。 俺はあいつに最悪の不幸を与えていたんだ。 大切な家族をあいつから奪った。 やっちゃいけない事を 俺はあの時、やっちまったんだ。 あいつはもう、十分苦しんだんだ。 今の俺のように…… 真斗は声をあげて泣いた。
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