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ーあれから四ヶ月
日生ちゃんが戻ってくるのは二ヶ月後、か
夜、誰もいない院長室の片付けをしながら、ぼんやり槙は思う。
あれから、救命センターに配属された海は、技術の面ではもちろん、患者の扱いにも長け、周囲からの評価は上々のようだ。
日生と顔を合わせても、この分なら修羅場を見ることもないだろう。
ただ、一つ気がかりなのは、彼女の体のこと。
二年前、彼女が病院にいたのは、検査入院のためだ。そして、その検査で疾病が見つかったと聞いたから。
あれ以来、治った って話も聞かないのよね
確か、肺の疾病だったと思うが、詳しい病状は分からない。アメリカには、彼女の兄が勤めている医療機関があるから、そこで治療も行っていたはずだ。
治っていればいいんだけど
そう思って溜め息を吐くと、ポケットから飴を取り出し、口に放りこむ。
舌の上に広がるのは、甘いミルク味。瞬時に、これをくれた男の甘ったるい笑顔が頭に浮かび、顔をしかめた。
せっかく笑えるようになったんだから、頼むわよ...
四ヶ月前の仏頂面を思い出し、再び溜め息を吐く。
彼女の帰国が『終わりの始まり』にならないことを願い、槙は部屋の電気を消した。
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