終わりの始まりー海

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***  あれ以降、監督責任者は日生から早次(はやつぎ)に変わった。  そして、それから数ヵ月後、早次の日本行きに伴って、自分も日本へ行くことになる。 「結局、あの人の手の上ですか」 「不満か?」  就職先が日生の叔母が経営する病院だと知り、不満を口にすると早次が無感情に問う。 「お前には不本意かもしれないが、おかげで就職できたんだ。せいぜい励めよ」  彼はそれだけ言うと、口にしていた煙草を灰皿で押しつけ、未だ引っ越しの荷物が残る自分の部屋に戻った。  アメリカの医師免許しか持たない自分が日本で働くには様々な条件があり、その措置をとらなければならない。今回、自分が働くにあたっては「その医療機関から技術を認められ特別に招聘された場合」ということになっており、その措置をとるために日生がいろいろと動いたと聞いた。  おそらく、早次から今回の日本行きを聞いて頼まれたのだろうが、個人的には色々と複雑な心境だ。 「…別に、もう何もいらないんですけどね」  雑然とした室内でそれだけ呟くと、自分を生かそうと動く全てがうっとうしいという感覚にも見舞われる。  が、時という代物は、けして止まったままの自分を待ってくれないというのも事実だった。 「仕方ないか…」  物事を無難に済ますには、周りが納得するだけの成果が必要だ。  それが分かっているからこそ、覚悟を決めるしかない。  そんな決意の下、海は溜め息を吐いた。
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