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第17章 前触れ
カップルの目覚めの朝。
甘い余韻に満ちた空気の中、彼の胸にすり寄る彼女。
彼にも、貴女にも心地好い香り――。
これが、アンテロースのバレンタイン・コンセプトとして届けられたのは、
依頼してから4日後。
「『タラシの匂い』は、タラされた方も虜にするって感じかな」
金曜の夕方、こんなアイデアと一緒にオフィスに現れた忍が、ニヤリと笑う。
そして、
「バレンタインだから、お客さんは女性になるわけだろう?
だから、店内のデザインも、エロさよりも甘さを重視したものにしてみた」
そう言って出されたショーウインドウのデザイン画は、
それまでの黒とアポロの色に替わって、
夜明けの色として、パープルローズと白で耽美が演出されている。
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