第17章  前触れ

3/27
前へ
/38ページ
次へ
しかしこんな時、彼らは決して彼女を追い込まない。 だから、エレベーター前まで忍を送り、 メールとメモの確認を済ませるまでは、いつも通りだった。 だが、柱時計のオルゴール音が定時を報せ、 それで簡単にデスクを片づけて背後を振り返ると、 そこにはニヤニヤする立花の顔がある。 そしてそんな顔を向けられると、いつも通りにさり気なく帰りを告げられず、 「あの、私、これで……」 いささか、ぎこちなくなる。 だが立花は、そういう彼女を楽しむかに更にニヤニヤを広げる。 「うん、お疲れさま。 ま、俺が言うまでもないだろうけど、楽しい週末を」 しかし、こういう状況は、まだどうにも慣れていない。
/38ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加