第16章  恋の味(続き)

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「あの、でも私に出来る事なんかありますか?」 そう聞いた彼女の前で、立花が苦笑を浮かべた。 「たぶんね、どうせ今も、目一杯、仕事も抱えてるだろうし、 時間もない上のやっつけ仕事みたいな事は、 完璧主義のアイツとしては渋ると思うんだよね。 だからといって、ここで上に断るのも俺の立場からすると難しくてさ」 そして、続けられた彼の言葉に、今度は那々が苦笑せずにはいられなかった。 「でも、俺一人から頼まれたら断ると思うけど、 中谷さんと一緒に頼めば、たぶんアイツもOK出すと思うんだよ」 この人、いったいどこまで知ってて、どこまで察しを付けてるんだろう。 そんな事が、思わず脳裏を掠める。 だが、これが仕事である以上、那々にも断ることはできない。 しかし、こうして呼び出された朝比奈は、やっぱり苦い顔を返してきた。
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