第1章

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「圭人(ケイト)・・・どうかしたの?」 「ああ・・・ごめん。 ちょっと、考え事してた。」 ベッドの中で考え事をするなんて・・・どうかしてる。 オレは、サイドテーブルに置かれた彼女のシガレットケースを手に取ると、おもむろに煙草に火をつけた。 今日は、設計を請け負ったレストランのオープン記念パーティーがあった。 隣りで寝ている彼女・・・美月理沙(ミヅキ リサ)は、ウチの会社唯一の女性意匠設計者なのだが、元々空間デザインやインテリアデザインが得意な事もあって、デザイン性を重視する施主の仕事はほとんど彼女に任せている。 本人の強い希望で、あえて名刺の肩書には「インテリアデザイナー」と銘打っているが、実は、彼女もれっきとした「一級建築士」。 『だって、インテリアデザイナーの方が響きが柔らかいでしょ?』 彼女はオレにそう言っていたが、どうやら「意匠設計」や「一級建築士」という肩書だと男が寄りつかない・・・というのが本当のところらしい。 まぁ、オレにしてみれば、仕事さえこなしてくれれば、そんなのどちらでもいいわけで・・・ 幸い、お客の評判も上々だし、ウチの会社には、もう1人「正式な役職を偽るヤツ」がいるので、その辺に関しては特に口出しをする事もないまま今に至っている。
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