第2章

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会社を出て、2、3分歩いたところにある蕎麦屋の暖簾を潜る。 13時を回ったせいか、いつもなら近隣のサラリーマンでごった返している店内も、今は閑散としている。 混雑する事で有名な店だけど・・・これなら、早く食べて帰れそうだ。 空いている座敷に上がり、蕎麦定食を注文する。 オレは、目の前に出されたお茶をひと口啜ると、携帯のメールを確認し始めた。 「何だ、今日も遅くなりそうなのか?」 「ああ・・・打ち合わせ、18時だって。」 先ほど受けた匂坂さんの言葉を思い出しながら、しばし項垂れる。 18時から打ち合わせを始めたら、終わるのはたぶん20時過ぎだ・・・ 「まあ、いいや。 とりあえず、七瀬さんの事はオレに任せとけよ。」 「・・・ああ。」 今日の夕飯、どこかで食べて帰ろうか・・・? こんな時、以前ならたいてい理沙と2人で食事に行っていたものだが、もうそういうわけにもいかない。 やっぱり、帰ってから適当に何か作るしかないか・・・ って、まだ昼飯も食ってないのに、夕飯の心配をしてるなんて・・・オレは、食う事しか頭にないのか? 「・・・フッ。」 ふと、そんな自分が可笑しくなった。 どうやら人は、後ろめたい問題がなくなると、一気に平和的思考に切り替わるらしい。 「なんだよ、気持ち悪いな。急に笑い出したりして・・・」 「いや・・・やっぱり、食は大事だと思って。」 「・・・は?」 オレは、訝しげに見つめている佐伯にチラッと視線を送ると、またひと口お茶を啜った。
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