6064人が本棚に入れています
本棚に追加
会社を出て、2、3分歩いたところにある蕎麦屋の暖簾を潜る。
13時を回ったせいか、いつもなら近隣のサラリーマンでごった返している店内も、今は閑散としている。
混雑する事で有名な店だけど・・・これなら、早く食べて帰れそうだ。
空いている座敷に上がり、蕎麦定食を注文する。
オレは、目の前に出されたお茶をひと口啜ると、携帯のメールを確認し始めた。
「何だ、今日も遅くなりそうなのか?」
「ああ・・・打ち合わせ、18時だって。」
先ほど受けた匂坂さんの言葉を思い出しながら、しばし項垂れる。
18時から打ち合わせを始めたら、終わるのはたぶん20時過ぎだ・・・
「まあ、いいや。 とりあえず、七瀬さんの事はオレに任せとけよ。」
「・・・ああ。」
今日の夕飯、どこかで食べて帰ろうか・・・?
こんな時、以前ならたいてい理沙と2人で食事に行っていたものだが、もうそういうわけにもいかない。
やっぱり、帰ってから適当に何か作るしかないか・・・
って、まだ昼飯も食ってないのに、夕飯の心配をしてるなんて・・・オレは、食う事しか頭にないのか?
「・・・フッ。」
ふと、そんな自分が可笑しくなった。
どうやら人は、後ろめたい問題がなくなると、一気に平和的思考に切り替わるらしい。
「なんだよ、気持ち悪いな。急に笑い出したりして・・・」
「いや・・・やっぱり、食は大事だと思って。」
「・・・は?」
オレは、訝しげに見つめている佐伯にチラッと視線を送ると、またひと口お茶を啜った。
最初のコメントを投稿しよう!