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「ただいま。」
玄関で靴を脱いでいると、リビングの方からパタパタと昂の足音が聞こえた。
「父、おかえりー!」
「ああ、ただいま。佐伯は?もう帰った?」
「うん、ついさっき。『もう少ししたら、父が帰って来るから』って言って。」
「そうか。」
もちろんオレも、早く嫁さんのところへ帰りたいだろうと思って、気を利かせて電話をしたつもりだったのだが・・・
入れ違いで帰ったと聞くと、何だか連れない気分になってしまう。
「ねえ、父。夕飯まだなんでしょ?」
「ああ。」
「今日は、アオイがカレーを作ってくれたんだ。よかったらどうぞ、って言ってたから・・・」
「・・・へぇ。」
リビングに荷物を置いて、キッチンへ入る。
昂の言葉通り、コンロの上にはカレーが入った鍋が置かれていた。
「・・・美味そうだな。」
「うん、美味しかったよ。よかったら、父も食べてみて。」
昂はそう言い残すと、タタッとリビングへ戻って行った。
フフッ、何だ・・・まるで自分のカレーみたいな言い草だな。
オレは、クスッと笑うと、鍋に入ったカレーを温め直した。
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