第2章

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温めたカレーをよそって、ダイニングテーブルにつく。 ・・・すると 「・・・ん?」 目の前の灰皿の下に、今朝置いたものとは違うメモ用紙が挟まっている事に気づいた。 もしかして・・・オレへの返事か? 灰皿を退かして、おもむろにメモ用紙を手に取る。 絵柄のついたピンク色のメモ用紙には、柔らかな女性らしい筆跡でオレ宛の返信が書かれていた。 『ご親切にしていただき、ありがとうございます。こちらこそ、よろしくお願いいたします。今日、昂くんは、とってもイイ子でしたよ。お口に合うか分かりませんが、カレーを作ってありますので、お腹が空いた時にどうぞお召し上がりください。    七瀬 碧。』 もしかして・・・佐伯が言っていた「ご褒美」とは、この事だったのだろうか? 夕飯を作らなくて済んだ上に、家政婦を続けてくれるという嬉しい返事まで・・・ 何より「昂がイイ子だった」という、滅多に聞く事が出来ない奇跡のような言葉に胸を打たれた。 まだ23歳の娘だと聞いていたから、どうせ世間知らずのお嬢さんなんだろうと思っていたけど・・・ 文章も丁寧で、字もキレイだし、前日フラフラになるまで振り回された昂の事を「イイ子」と言えてしまうその度量の広さも目を見張るものがある。 きっと彼女は、聡明でとてもしっかりした女性なんだろうな・・・ どうやら、派遣会社が言っていた「最終兵器」という言葉に嘘はなかったようだ。
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