第2章

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***** それから毎日・・・彼女とのメモ紙のやり取りは続いた。 『今日は、昂くんと一緒に本屋さんへ買い物に行ったのですが、あまり気に入った本がなかったようで・・・昂くんは、少し元気がありません。なので、隣り町にある大きな本屋さんへ連れて行ってあげたいと思っているのですが・・・明日、昂くんと一緒に出掛けてもよろしいでしょうか?   七瀬』 『いろいろとご面倒おかけして、申し訳ありません。あなたのお心遣いには、とても感謝しています。ぜひ、連れて行ってあげてください。きっと、昂も喜ぶと思います。   城崎』 『今日、幼稚園の先生に褒められました。昂くんは、とっても絵を描くのが上手なんですね。さすが、設計士の息子さん。空間を描くのが上手で、私もすっかり感心してしまいました。   七瀬』 『昂が本を読んだり、絵を描いたりするのが好きになったのは、一人にしてしまう事が多かったせいじゃないか?と時々考えてしまいます。好きなものを見つけてくれるのは嬉しいのですが、ホントにそれだけでいいのか・・・親としては、考えさせられる事ばかりです。   城崎』 『昂くんは、いつもお父さんの自慢話を聞かせてくれますよ。そんな時の昂くんは、とっても嬉しそうで・・・だから、心配ありません。城崎さんの愛情は、ちゃんと昂くんに届いていると思います。   七瀬』 『そう言っていただけると、とても心強いです。正直、一人では至らない事ばかりで・・・でも、何だか、心が軽くなりました。本当にありがとう。   城崎』 まだ会った事もないくせに、なぜか手紙だと普段は口に出せないような心の内側まで書けてしまう。 今まで、SNSなどで見ず知らずの人間同士が仲良くなる事には懐疑的だったけど・・・ むしろ、知らない者同士の方が話しやすい事だってあるのかもしれない。 手紙のやり取りをする度に、そんな思いが強くなって・・・ 次第にオレは、家に帰って彼女の返事を読むのが楽しみになって行った。
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