第2章

14/28
前へ
/488ページ
次へ
家に帰ると、決まって昂はオレの膝の上に座りながら、今日あった出来事をあれこれと話してくれる。 それは、オレと昂を繋いでくれる大事なひと時でもあった。 「ねえ、父・・・アオイったらね、今日もまたスーパーでお金バラ撒いちゃってさ・・・」 「ソレ、昨日もだろ?」 以前は幼稚園の事ばかりだった昂の話も、日を追う毎に彼女の残念な失敗談で埋め尽くされるようになった。 「うん。バカにつける薬はないって言うけど、アオイにつける薬はあるのかな?いろいろ調べたけど、結局1コも見つからなかった。」 耳を疑うような辛辣な言葉とは裏腹に、増えて行く昂の笑顔・・・ 彼女には申し訳ないが、親としては息子の笑顔を見られる事が何より嬉しかった。 そして今日もまた、夕飯を食べながら彼女のメモに目を細め、返事を添える・・・ そんな毎日を繰り返しているうちに、だんだんオレも彼女に会ってみたいと思うようになった。 その理由は、彼女のギャップ。 メモに記された「常識的で繊細な心遣いが出来る彼女」と、昂が言う「つける薬がないほどバカでダメな彼女」が、どうしても重ならないのだ。 とはいえ、遅くまで仕事に追われているオレは、なかなか早く家に帰る事も出来なくて・・・ 昂の話を聞きながら、彼女に対するギャップだけが膨らんで行く・・・そんな日々が続いて行った。
/488ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6064人が本棚に入れています
本棚に追加