第2章

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そんなある日のこと・・・ デスクに座ってパソコンを叩いていると、匂坂さんが手帳を片手に社長室へ入って来た。 「社長。今日の夕方に予定されているマンションの打ち合わせなんですが・・・」 「・・・ああ、川崎の?」 「ええ、先ほど先方から明日に変更してくれないか?と連絡がございまして・・・」 急に変更なんて・・・どこかの現場でトラブルでもあったのだろうか? オレは、パソコンの画面から目線を離すと、おもむろに匂坂さんの方へ向き直った。 「で、明日の予定は?」 「15時なら空きがございますので・・・そこでブッキングすればちょうどいいか、と・・・」 「じゃあ、それで・・・ところで、今日の予定は? 川崎の打ち合わせの後、何か入ってる?」 「いいえ。午後に来客予定が1件入っている以外は、特に何も・・・」 という事は、この図面さえ仕上げてしまえば、早々に家へ帰れる・・・ 「佐伯、今日は早く帰れそうだから・・・」 「そうか・・コレでようやく、面白くなりそうだな。」 ニヤリと笑う佐伯をよそに、オレは1日の大半をパソコンの前で過ごした。 ・・・そして、18時を回った頃。 「社長、お疲れさまです。」 「お疲れ。」 社員たちがデスクに向かう中、一足先に会社を出て車に乗り込んだ。 (フフッ・・・こんな時間にオレが帰ったら、きっと2人とも驚くだろうな・・・) その40分後に、驚愕の事態が訪れる事も知らず・・・ オレは一人ほくそ笑みながら、颯爽と家路に向かって車を走らせていた。
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