第2章

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(うーむ・・・この女、なかなかやるな。) その指先は、絶妙な力加減でオレの筋肉の凝りの元を着実に刺激して行く。 まさに「痒いところに手が届く」とは、この事で・・・ どうやら、オレが何も言わなくとも、彼女は「肩凝りの何たるか」を熟知しているものと思われた。 「よかったな、父。 いいマッサージ師が来てくれて。」 「ああ・・・これで、だいぶ肩の凝りも解(ほぐ)れそうだよ。」 何事もそれなりに器用にこなす昂も、オレの肩揉みだけは歯が立たなかったようで・・・ 次第に肩の凝りが解れて行くオレを見つめながら、すっかりご満悦の表情だ。 昼間、あんなに張っていた肩が、みるみるうちに柔らかくなって行く。 正直、たった15分の肩揉みで、ここまで楽になるとは思ってもいなかった。 きっと、「棚からぼたもち」というのはこういう事を指すのだろう。 元はと言えば、仕返しの為にやらせたはずの肩揉みなのに、結果として、腕のいい整体師を見つける手間が省けたわけだし。 とはいえ、時計の針は19:30をとうに回っている。 ココから駅までは、徒歩で10分足らず。 でも、もう外は真っ暗だし、女性の一人歩きは何かと物騒だ。 やはりココは、オレが車で彼女を送って行った方がいいか・・・ そう思った瞬間、後ろから今まで聞いた事もないような奇怪な声が聞こえた。
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