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「・・・うぉいッ!!!」
その声とともに、勢いよく動いていた彼女の指先がピタッと止まり、辺りに静寂が訪れた。
・・・なんだ? 今のは?
そう思って振り返ろうとした瞬間・・・
・・・バンッ!
「終わりましたッ!」
彼女は、オレの肩を乱暴に叩いて一方的に肩揉みを終了すると、リビングの片隅に置いてある荷物を手にした。
いやいや、ここまでやっておいて途中で放棄はないだろう。
オレは、そそくさと立ち去ろうとする彼女に向かって声を掛けた。
「おい、ちょっと待て。」
「いいえ、待てません!」
「もう遅いから、オレが・・・」
「それでは、これで失礼しますッ!(ペコリ)」
どうやら、オレの言葉など聞く耳も持たないらしく、彼女はペコリと頭を下げて挨拶をすると、勢いよくリビングから飛び出して行ってしまった。
「なんだ、アレ?・・・嵐みたいな女だな。」
ポツリと呟くオレに、昂がバツの悪そうな笑顔を浮かべながら答えた。
「まぁ・・・悪いヤツじゃないんだけどね。」
フフッ・・・悪いヤツじゃない・・・か。
オレは、彼女が消えて行った玄関の方向を見つめると、半ば呆れたように小さく笑った。
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