第3章

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***** 「おはよ、父。」 ・・・ギクッ。 朝食を作り終えた後、ダイニングで彼女宛てに伝言を書いていると、いきなり後ろから声を掛けられた。 っていうか・・・オマエ、タイミング悪すぎだろ。 オレは、咄嗟にメモ紙を裏返すと、何事もなかったかのように昂に向き直った。 ・・・そして 「あ? ああ・・・おはよう。」 ダメだ・・・うっかり声が裏返ってしまったせいか、心の動揺が押さえきれない。 そんなオレを見て、昂が首を捻りながら言った。 「・・・何書いてんの?」 「い、いや・・・何でもない。」 誰にも内緒でこっそり彼女とやり取りしている現場など、昂に抑えられてたまるものか。 どんなに不審な行動に見えても、このメモ紙だけは絶対に露見してはならない。 オレは裏返したメモ紙の上に手を突くと、あたかもソコには何も存在していないように振る舞った。 世の中では、この行為を「隠した」とも言う。
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