6054人が本棚に入れています
本棚に追加
/488ページ
*****
「おはよ、父。」
・・・ギクッ。
朝食を作り終えた後、ダイニングで彼女宛てに伝言を書いていると、いきなり後ろから声を掛けられた。
っていうか・・・オマエ、タイミング悪すぎだろ。
オレは、咄嗟にメモ紙を裏返すと、何事もなかったかのように昂に向き直った。
・・・そして
「あ? ああ・・・おはよう。」
ダメだ・・・うっかり声が裏返ってしまったせいか、心の動揺が押さえきれない。
そんなオレを見て、昂が首を捻りながら言った。
「・・・何書いてんの?」
「い、いや・・・何でもない。」
誰にも内緒でこっそり彼女とやり取りしている現場など、昂に抑えられてたまるものか。
どんなに不審な行動に見えても、このメモ紙だけは絶対に露見してはならない。
オレは裏返したメモ紙の上に手を突くと、あたかもソコには何も存在していないように振る舞った。
世の中では、この行為を「隠した」とも言う。
最初のコメントを投稿しよう!