第3章

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「・・・ふーん。」 どうやら昂は、何かキナ臭いと感じ始めたらしく・・・訝しげな目で、じっとオレの手の下を見ている。 ・・・そして 「父・・・今、何か隠したよね?」 「・・・・」 「指の間から、紙切れの端がはみ出してるんだけど・・・」 ・・・ハッ! 慌てて手を見てみたが、メモ紙はどこからもはみ出してなどいなかった。 「ハハッ、どうしたの、父? そんなに焦っちゃって・・・」 「・・・・」 オレが隠したりしたのが悪かった、とはいえ・・・朝から大人をからかって遊ぶなんて・・・ 「昂・・・早く顔を洗って来なさい。朝ごはんにするから。」 「はぁい。」 昂はそう返事をすると、オレに無邪気な笑顔を向けながらタタッと洗面所に駆け込んで行ってしまった。 「・・・はぁ・・・助かった・・・」 オレは、とりあえず昂をやり過ごせた事に胸を撫で下ろすと、書き終えた伝言をじっと見つめた。 『遅くなった時は、オレが送るから勝手に帰らないように。  城崎』 また昂に見つかったら面倒だし・・・今度、彼女に会ったら連絡先を交換しておいた方がよさそうだな。 もちろん、佐伯には教えない前提で・・・ オレは、いったんメモ紙を引出しに入れると、急いで朝食の準備に取り掛かった。
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