第3章

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「はあ? あの日、オマエの足を踏んだのが彼女だった、って・・・どういう事だよ?」 「そんなの、オレが聞きたいくらいだよ。」 とりあえず、昨日の出来事をかいつまんで説明すると、佐伯は驚きを隠せないと言わんばかりの表情で身を乗り出した。 「はぁ・・・驚いた。実際、そんな偶然があるものなんだな。」 「・・・ああ。」 正直、オレも驚いた。 まさか、あの時オレの足を踏みつけた女と、ニコニコしながら毎日伝言をやり取りしていたなんて・・・ 「でもさ・・・それって、逆に運命を感じちゃったりしない?」 「・・・運命?」 「だって、そうだろ?駅ですれ違っただけならまだしも、ぶつかって暴言を吐かれて足まで踏まれてるんだぞ。」 「・・・だから、何?」 「はぁーー!バカだね、オマエ。何で分かんないんだよ。いいか?それがもう2度と会わないような人間なら、単なる事故でいい。でも、オマエと七瀬さんはそうじゃないだろ?その後、確実に関わり合いを持つ事になる人間同士が偶然駅でぶつかる確率を考えてみろ。いったい何%あると思ってんだ?限りなくゼロに近いだろ。」 まあ・・・たしかに。 オレだって相当驚いたし、それは彼女も同じだったと思う。 だからと言って、それを運命づけるのはどうかと・・・ 世の中なんて、常に偶然と必然の重なり合いで回っているようなものなんだから。
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