第3章

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「でも『偶然』って、そういうもんだろ?」 そう言うと、佐伯はオレの顔を見ながらクスリと笑った。 「まあ、偶然にしては出来過ぎだけど・・・いいんじゃない?面白くなりそうだし。」 まったく・・・人の気も知らないで。 オレは、その偶然のおかげで、散々痛い思いをしたっていうのに・・・ 「・・・フッ。」 「・・・何が、可笑しいんだよ。」 「いや・・・とにかくさ、仕事終わらせて早く家に帰ってやれよ。昂もオマエが帰って来るのを首を長ーくして待ってるんだしさ。」 いやいやいや、オマエなぁ・・・いったい、どの口で言ってんだ? だいたい、オレがこんなに忙しくなってるのは、誰のせいだと思ってるんだよ。 オレは目の前で笑いながら話す佐伯に向かって、日頃の鬱憤を晴らすかのごとく強い口調で言った。 「だったら、オマエも手伝え。」 「・・・は? オレが? 何で?」 ・・・は? 何で?・・・だと? 呆れた・・・コイツ、自分の立場がまったく分かっていない。 「何で、じゃないだろ?そりゃ、仕事を取って来てくれるのは有り難いけど、それをやる人間が全然足りないんだよ。どう見ても、需要と供給のバランスが悪すぎるだろ!」 「ふーん・・・需要と供給、ねえ・・・」 「オマエだって、一級建築士の資格持ってるだろうが。だいたい、何だよ『営業部長』って・・・」
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