第3章

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「あ、匂坂さん。悪いんだけど、コイツの名刺作り直しておいてくれない?役職を『専務』にして。」 「は?」 オレのひと言に、佐伯は驚愕の表情を浮かべながら言葉を失っている。 そもそも、今までの『営業部長』が話をややこしくする原因だったんだ。 『あの、非常に申し上げ難いのですが・・・出来れば営業部長様ではなく社長様にお話を通していただきたいと・・・』 ウチの事情を知らない一見の取引先や施主から、今まで何度このセリフを聞いて来たことか。 その度に、ヤツがオレと同等の立場である事を説明しなければいけないのだから、面倒極まりないったらありゃしない。 それでも責任を伴うような肩書きは荷が重いのか、相変わらずコイツは飄々と『営業部長』などという中途半端な役職名が書かれた名刺を手に、日々、営業という名のお散歩を繰り返しているのだ。 取引先の綺麗な受付嬢から、美味しいスイーツの店を教えて貰ったりしながら・・・
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