第3章

15/20
前へ
/488ページ
次へ
そんなお世辞にも和やかとは言えない空気の中、今日もオレはエラそうに肩を差し出す。 「・・・ん。」 どうしてそんなにぶっきらぼうな態度しかとれないのか、自分でもよく分からない。 これから何かと世話になるであろう彼女とは、出来るだけフランクな関係を築きたいと思っているけど・・・ 後ろから伝わって来る彼女の戸惑いに・・・ 終始、落ち着かない言動を繰り返す彼女に・・・ きっと、出会い方が悪かったんだな、と諦めにも似た気持ちが頭をもたげる。 あの日、オレたちが駅で出会わなかったら、もう少しやんわりとした関係を築く事が出来ていたのだろうか? 彼女はまだ、オレの前で一度も笑っていない。 「今日は、勝手に帰るなよ。」 また性懲りもなく、彼女に高圧的な言い方をしてしまった。 ホントはもっと優しく言ってやりたいと思ってるのに、どういうわけか口を開けばこんな言葉ばかりだ。 どうも彼女といると、調子が狂ってしまう。 もっと自分で自分をコントロール出来る人間だったはずなのに、言い方一つ自分の思い通りにならないなんて・・・ 「分かりました。」 事務的な彼女の声に、またオレたちの距離が少し離れたような気がした。 どうやら彼女は・・・オレが苦手なようだ。
/488ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6064人が本棚に入れています
本棚に追加