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(あの胸の高鳴りは、いったい何だったのだろう・・・?)
家に帰る道すがら、先ほどあった出来事を順に思い返す。
初めて聞いた彼女の笑い声・・・
優しさを湛えた穏やかな笑顔・・・
そして・・・
昂の頬を捕らえた柔らかそうな桜色の唇・・・
思い出すだけで、また胸が・・・
そこまで考えて、はたと思考が止まった。
(ちょっと、待てよ・・・それじゃ、まるで・・・)
いやいやいや・・・初恋の時みたいだ、なんてないだろ?
オレには子供がいるし、冴子以外の女なんて・・・考えた事もない。
それに、わがままで面倒な若い女なんて苦手なだけだし。
どうせ付き合うのなら、理解のある大人の女の方が楽でいい。
まぁ、この先、オレが誰かと付き合う事なんてないとは思うけど・・・
そう考えると・・・やっぱり、さっきの出来事は?
「・・・気のせい、だな。」
うん、そうだ。 それしか考えられない。
そう確信したオレは・・・ルームミラーに映る昂を見つめながら、少しだけホッとした気分で頬を緩めた。
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