第3章

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(あの胸の高鳴りは、いったい何だったのだろう・・・?) 家に帰る道すがら、先ほどあった出来事を順に思い返す。 初めて聞いた彼女の笑い声・・・ 優しさを湛えた穏やかな笑顔・・・ そして・・・ 昂の頬を捕らえた柔らかそうな桜色の唇・・・ 思い出すだけで、また胸が・・・ そこまで考えて、はたと思考が止まった。 (ちょっと、待てよ・・・それじゃ、まるで・・・) いやいやいや・・・初恋の時みたいだ、なんてないだろ? オレには子供がいるし、冴子以外の女なんて・・・考えた事もない。 それに、わがままで面倒な若い女なんて苦手なだけだし。 どうせ付き合うのなら、理解のある大人の女の方が楽でいい。 まぁ、この先、オレが誰かと付き合う事なんてないとは思うけど・・・ そう考えると・・・やっぱり、さっきの出来事は? 「・・・気のせい、だな。」 うん、そうだ。 それしか考えられない。 そう確信したオレは・・・ルームミラーに映る昂を見つめながら、少しだけホッとした気分で頬を緩めた。
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