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いかんいかん
仕事中、しかもここ貸出カウンターだし…
それもこれもさっきの学生がつけてたコロンのせいだ…
健太と同じほんのり甘い石鹸のようなあのコロンの香り。
これまで配属されていた書籍修復や管理の裏方から、今年度になり突然配置変えされカウンター業務に異動になった。
同僚たち以外の人間との絡みがほぼ皆無な部署からのカウンター業務への異動は、ネクラな人見知りの僕にとっては天国から地獄に突き落とされた心地だった。
しかも、カウンターに座るようになって気付いた事。
健太が愛用していたコロンはかなり人気のあるコロンなんじゃないかって事。
春先は週に1~2回のペースで、7月に入った最近は週に3~4回のペースで同じ香りを纏った学生にあたる。
頻度が上がって来てるのはやっぱりアレですかね?
夏だから?
浮かれてるから?
汗臭くなる時期だから?
コロンなんて小洒落たものとは無縁の僕には全く理解の出来ない話しですが、でも、恋人から漂ってくる甘めのコロンとほんのり体臭が混ざったような香りは…
「あのー…」
「うわっ、あっ、こっこちらですねっ」
不意にかけられた声に(いや、もしかしたらさっきからいたのかもしれないが)バーコードリーダーをガタガタと踊らせながら書籍にかざす。
「あの、それ表紙…」
「あっ、ホントですね。ははは」
今流行りのどこぞのアイドルグループと同じ前髪をした女子学生が不振そうな瞳で貸出作業の一部始終を見ている。
「えっと、貸出は14日までです」
「はい」
軽く会釈をした女子学生は同じフロアにある自習室も兼ねたフリースペースへと歩いていった。
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