一章

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「これからよろしくお願いします」  すでに住んでいる住人に挨拶を終え、自分の部屋へと戻る。時刻はすでに12時を過ぎており、腹部からは空腹を訴える獣の唸り声に似た音が鳴る。 「買出し、行ってない。行かないと」  ベランダに出てタバコを吸いながら独り言をつぶやく。今日から一週間分でも買い込んでおかなくては飢えて死んでしまう。さらに翌日からは大学も始まる。気分が重くなっていく。ため息とともにタバコの煙を吐き出し、用意していた灰皿にタバコの火種を押し付け、消す。  煙の残り香を見送り、ベランダから部屋に戻り。床に転がっていたショルダーバックを肩に掛け、新しく自分の部屋となったその場を後にする。  散歩ついでにスーパーかコンビニを探すが、それらしきものが見当たらない。都会に比べると木々が多くみられ、ビルと言うよりは一軒家のほうが目立っている。  アパートから数分歩いた先には閑静な住宅街が存在し、さらにそこから少し歩くと、周りに忘れ去られてしまったかのような公園が姿を現した。  ボロボロでところどころ錆が浮いている遊具たち、少しの風でゆれるブランコからはかみ合わない歯車が鳴らす不快な音が響いてくる。日曜日の昼間だと言うにもかかわらず、子供の姿は一人もない。 「ちょうどいい」  誰もいない静かなその公園は木で作られたであろうベンチが設置しており、その隣には自動販売機が設置してある。幸いなことに自動販売機は動いており、小銭を投入して冷えた炭酸のボタンを選択した。  取り出し口から飲み物を取り、プルタブを起こす。ゴクリ、と喉を鳴らし一口を飲み込んだ。ピリピリとした刺激が口と喉全体に伝わっていく。一口飲んだ勢いそのままに、二口、三口、とすべて飲み干した。炭酸が喉まであがってくるのを感じながら、懐にしまってあったタバコを取り出し火をつける。灰を先ほど飲み干したジュースの缶に落としながらボロボロのベンチに腰を下ろした。
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