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「俺もう、出世出来ないけど……いいか?」
そう言って差し出した手の中には、赤いビロードの小箱。
開かれた箱には、給料1ヶ月分にも満たない小さなダイヤモンドを携えた安物の指輪。
目の前には、明らかに狼狽えているであろう紗也。
その表情は見なくても想像がつく。
「それって……」
と、小さく呟いた紗也は、黙って左手を差し出した。
「いいに決まってるじゃん」
って……頭を上げた俺に、少し照れたようにはにかんだ笑顔を見せた。
あーあ、マジで最悪だ。
あんな話がのぼらなきゃ、コイツをもっと幸せに出来たのに……。
だけどこれが、俺にとって最良の人生の選択。
2016.1.17 by KAORI
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