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先ほどから隣席にいる同期入社の菊池の手は
止まり、別れた彼女の話しを持ち出す。
彼女にとってあらゆる面で『自分以上の男』
だから、別れ話しにもなったのだろう。
そんな相手の話しを聞くほど虚しいものはない。
いや、自分が『相手以下』という事実を
知りたくないだけだ。
それは、くだらないプライド?
強がり?バカバカしい?傷つきたくない?
・・・いかん、乙女思考になる。
業務支援・広報課という名称はあれど
『PC部』と揶揄されているデータ入力部隊の
一員だ。
とはいえ、各部門のあらゆる業務に精通して
いなければデータもただの数字の
羅列でしかない。
ひたすらに裏方業務ではあるが、
やりがいのある仕事だ。
表舞台に立つ営業部とは、華やかさには
欠けるけれど。
「嶋田・・・俺の、この俺さまの、
ゴールドフィンガーがもげそうだ」
「余裕じゃない。あと5分、もげたらボンドで
くっ付けてあげるよ」
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