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でも、ここも本当の意味での研究室ではない、と葵さんは言う。
「来客が入れるのはここまで。研究室の中は、クラス3。衛生だけじゃなくて、情報管理、警備システムも高レベルなのよ。あなたのお兄さんは、それを軽々突破しちゃったけど」
あいつのせいで警備体制は一から見直され、現在はさらに強固なものになっているという。なぜかオレが申し訳ない気分になるよ。
大きなガラス越しに、作業をする研究員たちの姿があった。
「まず、ここではウイルスの分離を行っているわ。検体からウイルスを採取するの。特定のウイルスを採取するためには、複数の培地で培養する必要があって・・・」
葵さんが唐突に説明を始める。けど、冒頭からオレには何を言っているのか、さっぱりだった。
セーフティーキャビネットとかマイクロプレートとか、どれがどれを指す名前なのかがわからない。
葵さんも露骨に面倒臭そうに話すから、聞き返す気にもなれないし。
ただわかったのは、機械やデスクの至る所に有害生物の危険性を現す、バイオハザードマークのシールが貼られているということ。
梅田さんは、興味津々の表情で葵さんの話に聞き入っている。
「こっちではウイルスの同定を行っているの。CPEだけじゃなくて、NT試験やタンパク質解析、PCR検査でウイルスの種類を確定しているところ」
AKBにNGTにGMTまで大集合ってことか? まったく、意味不明だな。
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