第17話 足音

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無理矢理引きずられながら、背後に抗議の視線を向ける。 葵さんは椅子の上に立ち上がり、天井の熱感知機にタバコを近づけていた。 次の瞬間、室内のスプリンクラーが一斉に作動し、水を吐き出し始めた。 これだけ大量の水ならば、三分で血痕を洗い流してくれるだろう。 事務室を抜けて、玄関まで連れて行かれる。 入口では、スーツ姿の男が警察と揉み合っていた。 怒声の応酬の只中に、オレは押し出された。 「頼むよ!」 頼まれても、オレにはどうすることもできない。 腕っぷしには自信がないのだ。なんとか説得できないものか。 「おまえらふざけてんのか! そこをどけ! 全員ブタ箱送りにするぞ。それとも病院送りがいいか! オラぁ!」 ドスの効いた刑事の声にすくみ上る。両手を前に突き出しながら「冷静に冷静に」と前へ進み出る。 すると、刑事の腕が伸びて来て、胸ぐらをつかまれた。強引にグイと顔を近づけられる。 「てめぇが、何でここにいる!」 眼光鋭い強面。正義感の塊のような面構え。ああ、この人は。 組織犯罪対策第一課、警部補、高柳俊介。
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