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戸沢の事件でオレを疑った、ザ正義感。
「何で刑事さんが!」
「病院から通報を受けて、駆けつけてみれば。おいおい、きな臭ぇなあ。血だらけで担ぎ込まれた奴らと、戸沢の件は関係してるのか? おい、答えろ!」
パーカーをつかんだ拳が、オレを揺さぶる。
無理だ。こんなヤクザまがいの刑事を三分も足止めするなんて、不可能だ。
「あの・・・その・・・」
しどろもどろのオレに業を煮やして、ザ正義感はオレを突き飛ばした。
「何隠してやがんだ。まあいい、おめぇなんかから聞くより、見た方が早ぇか」
事務室に入ろうとする刑事の足に、必死でしがみつく。
駄目だ、もうもたない。あと何分だ? 二分? 一分? 葵さん、もう無理だよ!
振り払おうとする刑事に、使える手段はもう、ひとつしか残されていなかった。オレは大声をあげる。
「わかった! わかったよ! 全部話すから! この場所で何が起きたかも、戸沢のことも!」
高柳刑事の足が止まった。しゃがみこんで、オレの頭を掴む。
そのまま頭蓋骨を握りつぶされるんじゃないかってくらい、強い力で指が食い込んだ。
「またAV撮影とかくだらねぇこと言ったら、ただじゃすまねぇぞ」
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