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ただし、話したって簡単に理解できることじゃない。
六月一日、全国大会の決勝戦に招待し、その目で見てもらおうと思った。
だから、今は何も聞かず、このまま帰ってくれと。
そもそも刑事部長から余計な手出しはするなと、何度も無線連絡が入っていたらしい。
ザ正義感は、引き返す口実を手に入れて、ようやくおとなしくなった。
「今度は本当なんだろうな。ふざけたまねすんなよ」
捨て台詞を吐いて車へと戻っていった刑事の後ろ姿を見て、オレはその場に座り込んだ。
ひとまずの安心と引き換えに、とんでもない約束をしてしまった。
でも、先のことを考えたって仕方がない。
きっとなるようになるさ。今、この場の問題は、吐き気を抑えることだ。
「ああ、疲れた。代わってよ」
葵さんは、こんなオレにトングを差し出してきた。
冗談じゃない。そのまま梅田さんにトングを手渡す。
愛する人のためならばと、オッサンは意気揚々とワニ肉を焼いた。
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