第17話 足音

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「ちょっと待った! オレのアイフォンつなげていい? なんせこっちは、葵さんセレクションなんだ」 嘘も方便。苦痛でオレが倒れてしまうよりも、ずっとましだろ。 手早く操作し、スピーカーから流れ出たのは、Jimmy Eat Worldの『Thinking,That’s All』。 「ずいぶん、激しい曲だね。葵さん、こういうのが好きなんだ。ウフッ。よし、じゃあ、出発するよ。さあ、シートベルトは締めたかい!」 爆音のビートに合わせて、エンジンがうなりをあげる。 笑顔でハンドルを握るオッサン。 ギターのリフに合わせて、エアーで弦を叩くオレ。 シートの上でピョンピョンと飛び跳ねるシンタロウ。 天井にしがみつき、目を細めて鳴く三男坊。 オレたち二人と化け物二匹を乗せた車は、寒中水泳競技会・全国大会へ向けて、走り出した。 〈 つづく 〉
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