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エレベーターが一階にたどり着き、オレはロビーを玄関方面に向かって歩き出す。
試合会場までは、どのくらいかかるんだろう、その間に寝ぐせをなおさなきゃって思いながら。
「そっちじゃないよ、こっち」
オッサンに呼び止められて引き返すことになった。てっきり会場まで車で行くんだと思ったのに。
運営の人の先導で、ロビーの奥へと案内される。中庭の方向だ。
巨大な石柱アーチの向こうは、一面ガラス張りの窓。差し込む日差しがまぶしすぎる。
ボーイさんがオレたちの到着に合わせて、窓を開いてくれた。こっち? 案内に従って中庭に足を踏み入れる。
ソテツ並木の向こうには、巨大なプールが広がっていた。
晴天の日差しを受けて、真っ白に輝く水槽。扇形を模した不規則な形で、最長幅は四十メートルを超える。水深は一メートル。もちろん、水は張っていない。
ここが試合会場なのか。このホテルが!
プールサイドには、無数の人たちがいた。
ガーデンパラソルの下で涼しげにドリンクを飲んでいる人、ラタン製のビーチチェアで寝そべる人、タイルの床にビニールシートを広げて座る人。
まるで南国のビーチで海水浴を楽しむリゾート客みたいに、思いおもいの姿勢で試合開始を待っている。
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